マッピングパーティを開こう!

K.Sakanoshita
12 min readDec 24, 2018

(OpenStreetMap Advent Calendar 2018向けの記事です)

イベント中の一コマ。新しく出来た図書館と植え替え予定の桜並木

メリークリスマス!今年も気がついたらこんな時期ですね。

2016年10月1日に「諸国・浪漫」というコミュニティを立ち上げて(引き継いでが近いかな)、京都の吉田神社をテーマにオープンデータソン(内のマッピングパーティ)を開催してから丸二年が立ちました。

今日まで、大阪は十三にある「Juso Coworking」を拠点に「もくもくマッピング!」と言う事や学校帰りに寄って地図を描くイベントを開いたり、京都の東寺から兵庫県の西宮まであった「西国街道」を実際に歩いて地図に描く連続イベント「西国街道シリーズ」を開いていました。

2017年12月からは、幕末の京都をテーマにしたマッピングパーティ「幕末京都シリーズ」を開きつつ、津山市、福井市、大阪市、名古屋市などでOpenStreetMapの講師をさせて頂いたりもしています。

私がマッピングパーティを開く理由はシンプルで、「一緒に地図を描く仲間が欲しい」です。そのため、婚活マッピングパーティから歴史まで、色んな方に興味を持って貰うテーマでイベントを開いている(つもり)。

色んな方に興味を持って貰おうとするのは、単に「OpenStreetMapの描き手が足りない」ではなく、自由な地図がある地域では、それを下敷きとして様々な活動が行いやすくなることと、OpenStreetMapはそれらの活動を繋げることができると考えているためです。

OpenStreetMapを下敷きにした様々な活動の事例は、簡単にまとめてブログに書いたので読んで頂けたらと。また、繋げることについては、事例ではなく、防犯や防災、歴史やアートなど、色んな方が一緒に地図を描くことで、お互いの活動を理解するきっかけになると考えています。

OpenStreetMapを紹介した際、地図が不十分で活動に使えない。マッパーが居ないので地図が不十分と言った、「鶏が先か、卵が先か」的な話しは良く聞きますが、誰かが描かないと何も始まらないのは確かです。

そして、一人のマッパーだけが地図を描いてもキリがなく、地域の方たちはOpenStreetMapを知らず、お金を掛けて地図を描いたり、著作権侵害の可能性を考えずにGoogle Mapsなどを印刷して使っていたりします。

そういった訳で、みなさんもマッピングパーティを開いてみませんか?
みなさんの地域で地図を描く仲間を増やし、色んな活動に使われるように働きかけてみませんか?きっと、楽しくなると思いますよ!

金戒光明寺での集合写真。大雨でしたが、終わりよければすべてよし。

マッピングパーティの開き方

正直、そんなに難しくありません。気楽に行きましょう。

まず、あなたの周りにマッパー仲間が居る場合、マッピングパーティを開催したいと相談してみましょう。おすすめの場所を教えてくれるかも知れません。少なくとも、一緒に活動してくれるかは分かると思います。

マッピングパーティ開催の大まかな流れは以下のとおりかな。
あまり意識せずしていることなので、文書化はなかなか難しい(苦笑

  • マッピングのテーマを検討する

単に地図を描くのでは無く、その先の活用を見据えてマッピングパーティのテーマを検討し、地域の有力者と繋がって、関係各位への説明と了解を得て、補助金を貰って、講師を外部から招聘して…。

まぁ、正論ですが、真っ先に「鶏が先か、卵が先か」問題にぶち当たるので政治力が求められます。下手すると別のイベントになりますしね。

そこまで人脈が無い方は、自分や仲間が興味を持つ場所(趣味でも実用面でもOK)を探しては如何でしょうか。単に気に入った場所でもOKです。

  • サーベイ対象とマッピング会場を探す

サーベイ(現地調査)の対象は、テーマがあれば沿い、無ければ好きな場所で決めましょう。また、下見を推奨します。下見では初心者が地図に描くのが楽しいと思う物(石碑、建物、銅像など)を探してみましょう。
※普段良く行く場所でも、意外と気づかない見どころがあるものです。

サーベイ場所とマッピング会場が同じなら最高ですが現実は難しい。電車やバス、車に乗って移動することを想定して、公民館やコワーキングスペースを探してください。(よくイベントする会社に相談するのもあり)

出来るだけ無料(または自腹で払える額)の会場を探すようにしてください。有料だと参加費の徴収に手間が掛かったりキャンセル時が大変です。
※参加者5名以下の場合、近くの喫茶店なんて技も使えるかと思います。

  • イベントの規模(参加人数)を決める

イベントの規模は「マッピング会場の広さ」「講師陣の体制」「使用ツール」。それに加えて「興味を持ちそうな人数」を予想して決めます。

経験が少ない講師1人の場合、初心者5名が限界と思います。慣れた講師でも初心者10名を相手にするのは厳しいので、補助してくれる仲間は大事。
※JOSMなら上記の人数。iDなら1.5倍、MAPS.MEなら2倍程度は可能かな
※2種類以上のツールでのマッピングは危険です。自分が使わないツールの説明を聞く参加者は少ない、暇を持て余したり、他のことを始めたり…

「興味を持ちそうな人数」は、当面の間、PCの基本操作が出来る方を前提にした方が良いと思います。PCが使えない方(お年寄りに多い)は仲間の講師が増えるまで待つほうが良いと思います。

  • マッピングパーティの告知をする

イベントの告知サイトを使って告知していきましょう。アンケート機能があれば、「懇親会の参加」、「お名前」「緊急連絡先」を確認しておきましょう。当日のキャンセルや遅刻時の連絡に使うことが目的です。

サイトにイベント情報を載せただけで申し込みが殺到することは稀です。facebookイベントを作ったり、自身のSNSで告知する必要があります。また、興味を持ってくれそうな方に個別連絡することも大事なことです。

特にfacebookだと、タイムラインのフィルタ機能によって、イベント情報そのものが相手に伝わっていない可能性があります。イベントが終わってから「そんなのあったの!?」なんて言われないようにしましょう。

近くのCode forコミュニティがあれば、定例会に継続して参加すると来てくれる可能性が高まるかも。(告知目的だけの参加は逆効果かも)
他にもIT系の飲み会や地域活動(若い方が多い方が望ましい)にも継続的に参加して、少しづつ認知して貰いながら告知することが大事かな。

あと、https://openstreetmap.jp/ にイベントを告知することも出来ます。サイトで公開した上で info@osmf.jp 宛に掲載依頼のメールをしましょう。
※ただし、そこまで大きな集客効果は無いとお考えください。

サーベイ(現地調査)中の一コマ。手元の地図に赤ペンでメモしていきます。
  • マッピングパーティの準備をする

慣れてくると地図無しでもマッピング出来ますが、初心者の方は紙の地図にメモして、デジカメ(スマホ含む)の写真と見比べてマッピングするのが分かりやすいのかなと思います。

そのため、サーベイ用の地図を作成して、参加者人数だけ印刷しておく必要があります。よく使われているのが Field Papers です。このサイトでサーベイ用の地図を作成(PDF)して印刷して使うことになります。

Field Papersのコンセプトは、メモした地図を写真に撮ってアップロードしてJOSMの背景画像に表示させることで、マッピングを簡単にすることですが、実際にアップロードまでするマッピングパーティはあるのかな?
※メモした紙地図を見ながら、地図を描いていくスタイルが一般的です。

また、Field Papersでは意外と思った場所で意図した縮尺の地図を作るのが難しいので、いっそのこと自作した方が楽かも知れません。

【参考】マッピングパーティで配った自作の地図
※OSMやWikimediaの写真はCC BY-SAですが、他はCC0とします。

  • マッピングパーティの一週間前

参加者が固まってきたと思うので、懇親会のお店を予約しましょう。
マッピングパーティのスタイルにも寄りますが、大抵マッピングが始まると、みんな頑張って地図を描いて、気がついたら時間になっています。

そのため、マッピングパーティの後はみんなでゆっくり話せる場を用意しておくことが、今後の継続開催と定着化に向けては大事かなと思います。

料理のジャンルは極端で無ければ、特に気をつける必要はありませんが、コース料理&飲み放題で一人辺りの金額が同じ方が会計的に楽かな。
※参加人数が多くない場合は、席だけ予約して割り勘の方が楽かも。
※あまり大したことでは無いけど、個室の方が盛り上がりやすいかも。

また、イベント数日前になるとキャンセルや申し込みが増えてきます。
懇親会の参加人数が変わるたびにお店へ連絡するのでは無く、少し待ちましょう。少なめで予約して、前日に確定連絡するとスムーズに進みます。
※店側としては、急なキャンセルより増えた方が対応しやすいため。

また、参加予定者にイベント日時と事前準備のリマインドメールを送りましょう。準備が苦手そうな方には、個人宛にメッセージも送りましょう。
※メッセージを送ると事前準備の質問を受けるパターンは意外と多い。

イベント前日には、参加者リストを用意しておきましょう。紙に印刷しても良いですし、タブレットで閲覧出来るようにする方法もあります。当日の出欠確認と緊急連絡先を把握することが目的です。

世界デビューした初心者さんたち
  • マッピングパーティ当日

ここまで来たら、みんなで楽しくマッピングパーティをしましょう。
主催者の緊急連絡先(携帯電話番号)、はぐれたら何時に何処へ行くかなど、予め連絡しておくと良いと思います。

また、特に初心者に対しては、紙の地図に何をメモするか説明した上で、サーベイ中、メモして欲しいものを具体的に依頼することも有効です。
※サーベイ中、初心者に話しかけてメモの内容を確認するのもあり。

あと、参加人数が多くなると、歩く時の隊列が長くなって時間が遅れがちになります。仲間に殿(シンガリ)をお願いするなど対応しましょう。
また、常連はともかく、初心者は隊列の前半にいるよう心がけましょう。

OpenStreetMapの概要説明やワークショップの方法は、ネット上に資料があるので、参考にして自分が納得出来る資料を用意して話しましょう。
特にOpenStreetMapの概要説明をしっかり説明することは、活動の意義を理解して貰う貴重な機会になると思います。

マッピング終了後、成果発表は出来るだけ行うようにしましょう。
特に初心者の方は、一言でも良いので、描いた箇所と感想を話すように促してください。話すことで参加していることを実感出来ると思います。

成果発表の方法は、講師次第で大きく変わると思います。
私の場合、参加者全員に話して貰い、それをプロジェクターに表示していきます。そして、最後に編集箇所を overpass turboで視覚化します

画面左側にある [diff]に日時を入れると編集箇所を可視化出来ます
  • 次回のマッピングパーティを企画する

マッピングパーティに限りませんが、人間、半年もすると色々と忘れてしまいます。懇親会で語り合ったマッピングに対する熱意さえ忘れます。

そういった理由で、出来れば毎月、無理なら三ヶ月に一度程度の頻度でマッピングパーティを定期的に開催していくことをおすすめします。

この開催頻度の違いは、各地のマッピングパーティにお邪魔して良く感じます。開催頻度が高い地域は半年程度で実用的な地図になり、それが呼び水となり、イベントに参加していないマッパーも地図を描いています。

開催頻度が高いからと言って、全員が毎回参加する必要はありません。
頻度が高ければ、1回逃してもすぐに次回があるので、参加者が自分のペースで参加出来ます。頻度が半年になると、1回逃すと1年間のブランクになってしまいます。この差はかなり大きいと思っています。

最後に

また、これは私自身の課題でもありますが、ある程度成長したマッパーコミュニティは、地域コミュニティの方たちとどれだけ一緒に活動出来ているかを問われているように感じています。

OpenStreetMapは使われて初めて価値を持ちます。そしてその地域で活動するコミュニティが持つ課題を解決し、目的を達成するための基礎情報として、OpenStreetMapの地理空間情報は価値があると考えています。

地域コミュニティの方たちに「無料の地図」と思われるのでは無く、地域のあらゆる地物をデータ化し、様々なアプリで活用し、未来に残していく活動と知って貰えたら、少し未来も変わっていくのかなと思います。

【参考】世界がOpenStreetMapを必要とする理由 — Qiita

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